2024.02.13
『より長く、より安全に、より楽しく』自転車に乗ってもらうために“町の自転車屋さん”|竹山商会 蓮沼店
Z ZONEがおくる、“町の自転車屋さん”のインタビューシリーズ。
第十五弾は、東急池上線蓮沼駅から徒歩2分に位置する「竹山商会 蓮沼店」さん。
蓮沼駅前は、落ち着いた雰囲気の中に多くの商店や住宅が立ち並ぶ地域です。その一画にある「竹山商会 蓮沼店」には、古くからの顔なじみのお客さんが多く訪れています。
今回は、三代目店主の竹山恵誠さんから、お店の歴史や仕事のやりがいなどをお伺いしました。世代を超えて地域の方が通い続ける、長く愛されるお店の裏側に迫ります。
初対面の“はとこ”が持ってきた創業時代の写真
―本日はよろしくお願いします。まず、お店の歴史を教えてください。
竹山さん:祖父が自転車屋をはじめたと聞いています。ただ、創業した祖父は52歳で亡くなり、創業当時を知っている父も54歳で亡くなっているため、詳しいことは、わかりません。なので、創業が何年なのかも知らないんですよ。
ただ、昨年、僕の“はとこ”にあたる人物が「自転車屋さんを営む親戚があったことを思い出して、近くに来た際にお店を探してみました」と訪ねて来たんです。
その方が、創業当初の「竹山商会」の写真を持ってきたんですよ。その写真によって、ようやく創業当時の風景を知ることができました。
風景から察するに、恐らく昭和20年代後半~30年代前半だと思います。これまで遺影でしか印象のない祖父らしき人物が写っているのを見て、やはり祖父は自転車屋さんをやっていたんだと改めて実感することができました。
―おじいさまが、自転車屋さんをはじめたきっかけはお聞きしていますか?
竹山さん:聞いてないですね。広島から出てきてはじめたこと以外はわかりません。番頭のような方を一人雇って、2人で経営していたと聞いています。規模感は今と、そこまで変わらないのではないでしょうか。
その後、祖父が亡くなり、自動車整備工場を経営していた父が自転車屋さんになりました。その父も亡くなり、僕が後を継いで、今年で26年目です。
―竹山さんは、自転車屋さんになることに抵抗はなかったのでしょうか?
竹山さん:元々、父が自動車屋さんで、僕はそこで整備をしていたんです。なので、父の仕事を継ぐことには違和感はなかったですね。それに自転車を学ぶと、車よりもおもしろいと思えたんですよ。自転車は修理をして、その場で乗ってもらうと、修理の成果がすぐにわかるじゃないですか? 車よりもわかりやすい。だからこそ、僕の性分には自転車の方が合ってるのかなと思いました
―竹山商会さんは、もう一店舗大田区にお店を出されています。出店の経緯を教えてください。
竹山さん:今から20年くらい前のことです。父親の世代から仲良くしていた自転車屋さんがあったんです。でも、店主さんが体調崩して、しばらく入院することになったんです。
その時、今の店を弟と2人で経営していたんですけど、2人で働くほどの広さでもないので「店主さんが入院して大変な間だけでも、手伝おう」ということで、弟が手伝いに行っていたんです。でも、残念ながら店主さんはお亡くなりになられてしまい、一人残された奥様も「これからどうしうようか」と言ってる間に、亡くなってしまいました。店だけが残されたのですが、最終的に大家さんから「ここは、ずっと自転車屋さんだったのに、急に閉じたら困る人もいるだろうし、もったいない。もしよかったら、このまま続けてくれない?」と言われ、そのまま弟が続けることになりました。
自転車屋さん同士の繋がり
―お店の特徴やこだわりについて教えてください。
竹山さん:僕は修理が好きなので、丁寧に素早く修理することを心がけています。とにかく早く、すぐにやるというスタンスを貫いていますね。
―来店される方は、どのような方が多いですか?
竹山さん:ご近所に住む方がほとんどです。年齢層で言えば、ご年配の方が多いですね。
みなさんお元気に自転車に乗られているのですが「足が悪くなったのでラクな自転車がいい」などと、電動に買い替えるお客さまも多いですね。あとは、大人用の三輪車も他店よりは多く販売していると思います。
―地域の自転車屋さんとは、コミュニケーションはとられていますか?
竹山さん:めちゃめちゃ仲が良いですね。「今度、○○のメーカーから新しい電動自動車が出るよ」というような情報交換はもちろんのこと、急ぎの修理でタイヤが足りなくなった時に「すみません! タイヤ貸してください」と声を掛け合うこともあります。
他にも、東京都自転車商協同組合で、春と秋にセールがあるんですが、その時も、ウチにある在庫じゃなく「他の色がいいんですけど、ありますか?」とお客さまに言われた時に「ちょっと待ってください」と他店舗に電話をして商品の貸し借りを行なっています。
―ライバルというよりは、仲間ですね。自転車屋さん同士で、地域の自転車屋を盛り上げるような取り組みは行なっていますか?
竹山さん:年に一度、駅前で『ひったくり防止キャンペーン』を行なっています。
自転車屋さんが、地元の警察署の方と一緒に池上駅前に立って『ひったくり防止キャンペーン』と書かれた横断幕を掲げ、「ひったくりに気をつけてください」という内容のリーフレットを配っています。
その他、自転車屋さん同士で協力するわけではないですが、地域との繋がりは多くあります。小学校などで実施される交通安全の俳句や標語のコンクールで審査員をしたり、小学校の一輪車の整備をしたり、自転車を通して繋がりを保っています。
大事に乗っている自転車に出会うとうれしい
―どのような時に、仕事でのやりがいを感じますか?
竹山さん:感謝された時ですね。修理後の自転車に乗ったお客さまから「こんなに良くなるの? 乗りにくくて当たり前だと思っていたから、良くなってうれしい」というようなことを言われると、私も非常にうれしいですよね。
―お客さまとのやりとりで印象的なことはありますか?
竹山さん:大事に乗っている自転車は、見て触るとなんとなくわかるんです。よくよく見ると、かなり前の自転車だなというものもあります。
「結構、長く乗ってますよね」なんて話をすると「お父さんに買ってもらったんだ」、「お母さんに買ってもらったから大事にしたいんです」みたいな思い入れがある自転車の話を聞けるんです。そういう自転車に触れると、すごくうれしいですね。
「直して乗れるもんだったら絶対長く乗った方がいいです」と言ってしまい、なかなか「買い替えをオススメします」と言えないので、商売としては失格かもしれないんですけどね(笑)
―今後の目標はありますか?
竹山さん:やっぱり長く続けていきたいです。体が動く限り、自転車屋さんを続けていくことが一番だと思います。
自転車で困りごとができても「あそこのおじいちゃんのとこに行けば大丈夫だよ」と言ってもらえるぐらい、年をとっても自転車修理を続けられたら素敵ですね。
―最後、これからご利用したいと思っているお客さまに向けてメッセージをお願いします。
竹山さん:やはり、せっかく買った自転車に『より長く、より安全に、より楽しく』乗ってもらいたいと思っています。修理のために持ってきていただいた自転車は、断らずに極力完全に直すと思っていますので、いつでもどうぞ気軽に足を運んでください。
おわりに
自転車も、自転車の修理も大好きだという竹山さんは、町中で『竹山商会』で購入した証であるステッカーが貼ってある自転車を見かけると、お客さんの顔が浮かぶと言います。
自転車を愛する竹山さんだからこそ頼める修理や、相談ごとをお抱えの方もいらっしゃるのでは。古くなった自転車の買い換えを検討している方は、まず一度、『竹山商会 蓮沼店』に足を運んでみてください。きっと、少しでも長く愛着のわいた自転車に乗れる方法を提案してくれるに違いありません。
【Infomation】
店名:竹山商会
住所:東京都大田区西蒲田7-18-10
電話:03-3731-9894