Z ZONE

2023.04.12

地域密着型の自転車屋さんが増えることを目指して“町の自転車屋さん”|サイクルポイントナカネ

Z ZONEがおくる、“町の自転車屋さん”のインタビューシリーズ。

第十三弾は、大田区山王にお店を構える「サイクルポイントナカネ」さん。

JR大森駅西口から徒歩10分、大森郵便局バス停から徒歩1分の場所にある、創業103年目の由緒あるお店です。

今回は、サイクルポイント代表の中根良夫さんから、創業から現在までの歴史や、印象的なエピソードについてお話を伺いました。100年以上地域の人々から愛されるお店の裏側にぜひ触れてみてください。

 

2020年に創業100年を迎えた歴史あるお店

下段左:代表の中根良夫さん

 

―本日はよろしくお願いします。まずは、お店の歴史を教えてください。

良夫さん:大正9年に『中根サイクル』として創業し、現在103年目のお店です。先々代から始まり私が3代目です。

創業当時は、リヤカーでタイヤの販売をしていました。
2代目の私の父が、現在は行ってないですがバイクの修理、販売と共に自転車に力を入れ、今の形になりました。

親父は14年前に亡くなり、その時に有限会社から株式会社にし、名前も『サイクルポイントナカネ』に変えました。

現在は、私とかみさん、長男と次男と次男の妻、スタッフ1人の6人で店を運営しています。

―お店の特徴を教えてください。

良夫さん:現在は何かに特化した自転車専門店が多いです。もちろんそれも良いと思うのですが、私たちは特化させるよりも町の自転車屋さんとして、地域の誰が来ても対応できるようにと考えて日々営業しています。

―どういうお客さんが多いですか?

良夫さん:地元に繋がりがあるお客さんが多いですね。
地域の行事の打ち合わせや、スタッフの友人との会話の中から「じゃあ、○○してよ!」と依頼されることもあります。

―相談に乗ることで集客に繋がっているんですね。

良夫さん:既存のお客様にはアプリを利用していただいています。アプリには、スタンプカード機能や、チャットでのお問い合わせに応える機能などがあります。最近は、若手のスタッフを中心に行っているSNSでも、集客に繋がっています。

 

東日本大震災で深夜2時まで長蛇の列

―長い歴史のあるお店ですが、これまでに印象に残っているエピソードはありますか?

良夫さん:東日本大震災の時は、電車がないので自転車が欲しいと、たくさんのお客さんが来られたんです。商札を持って一列にずーっと並んでくださいました。

当時は、私とかみさんとアルバイトスタッフの3人で店を運営しており、電車が止まっていた事もあり、少しでも多くの方の力になれればと深夜の2時まで営業を続けました。
とても印象に残っていますね。

 

親子で働くようになり店が変わった

―息子さん達は、いつから店を手伝うようになったのでしょうか?

良夫さん:少し前に私や、かみさんの体調が悪くなったり、業務から離れたりすることが増えたんです。その時期は、電話が鳴っていても忙しいと出られなかったり、手が汚いまま接客してしまっていたり、世の中が変わっている中で古い感覚のままでした。誰からも注意されないので、昭和のまま、現代にスイッチが切り替わっていない店だったんです。

―息子さんたちが入って、変わらなきゃいけなくなった時に良夫さんの中で葛藤はありましたか?

良夫さん:息子たちが入る前は、毎日、忙しい事を理由に色々な事が後回しになっていました。ただ、息子たちの意見を聞いて、相談して修正していったんです。
みんなすごく良く働いてくれて、今では、活気が出て、うまくお店もまわるようになりましたね。お客さんからも「前は汚かったけど、きれいになったね」とか「あれ、改装した??若手が多くなったね~」と言っていただける様になりました。

店の雰囲気が変わったことで、お客さんからお褒めの機会も増え「ありがとう」と言われることも増えました。「ありがとう」と言われることは仕事のやりがいですからね。

自転車のメンテナンスをする良夫さん

“町の自転車屋さん”が増えることを目指して

―今後の目標を教えてください。

良夫さん:目指せ200年ですかね。
でも、店を200年残すためには努力しないといけないですね。

私は『サイクルポイントナカネ』だけでなく、
“町の自転車屋さん”そのものを残したいんですよ。

家族揃って気軽に相談できるいわゆる“町の自転車屋さん”が減っていることを感じています。引っ越した先に気軽に入れる自転車屋さんがないと言われると、悲しいですね。

そもそも、みんな町の自転車屋さんの存在を知らない事も多いです。
そこで、今は中学生の職場体験なども積極的に受け入れて、若い人たちにまず自転車屋さんを知ってもらうこと、自転車屋さんになりたいと思ってもらうことにも力を入れています。

ウチには、高校時代からバイトとして働いている若いスタッフがいます。彼はお客さんのお子さんであり、身内ではありません。
彼も年を重ねると、家族に混ざって働くことが嫌になるかもしれませんし、誰かの下で働くよりも自分で店をやりたいと思うかもしれません。その時は、独立して店を持ってもらいたいと思いますし、自分の店を持てるように育てているつもりです。

働いている若手スタッフ

そうやって若い人材を育てて外に出すことが、結果的に、ウチを残すだけでなく、自転車屋さん自体が広がることに繋がればいいと思っています。

―最後に、これから来店される方へのメッセージをお願いします。

良夫さん:自転車の購入や修理に限らず、気軽に足を運んでください。スタッフはみんな明るく入りやすい店です。話をするだけで、繋がれる部分があるかと思います。近くに来たら覗いてみてくださいね。

 

おわりに

取材当日はスタッフ5人がフル稼働で働いておられました。
「今日は忙しい方なんですか?」とお聞きすると「ヒマな方です」とのご回答をいただき、多くの人々から愛される活気の溢れる店なのだなと驚きました。
大きな挨拶と優しい笑顔で、地域の人々と接しているスタッフの姿を見ると、その忙しさも納得です。

『サイクルポイントナカネ』さんの魅力は、インタビューのみならず、現地に行ってこそ伝わるものも多くあります。ぜひ、みなさんも足を運んでみてください。

 

【Information】
店名:サイクルポイントナカネ
住所:東京都大田区山王3丁目9-3
電話:03-3771-1644