Z ZONE

2022.11.29

生活に直結している乗り物だからこそ、利用者の負担を減らしたい。大田区中央の“町の自転車屋さん”|じてんしゃ屋はすぬま

Z ZONEがおくる、“町の自転車屋さん”のインタビューシリーズ。

第十二弾は、大田区中央にお店を構える「じてんしゃ屋はすぬま」さん。

大田区の真ん中に位置する、地域の人々に愛されるお店です。

今回は、じてんしゃ屋はすぬま代表の蓮沼勝浩さん、息子さんの隼弥さんから、お店の歴史や今後の目標などについてお話を伺いました。お客さまの生活を第一に考えた店のあり方に、ぜひ触れてみてください。

今年で25周年、地域の人々に愛されるお店

―本日はよろしくお願いします!

左:蓮沼さゆりさん 真ん中:蓮沼勝浩さん 右:蓮沼隼弥さん

―まずはお店の歴史を教えてください。

勝浩さん:「じてんしゃ屋はすぬま」は1997年7月に開業しました。今年で25周年のお店です。
大森山王にある自転車とバイクの併売店で15年ほど修行をさせていだいた後に、独立して、店をオープンしました。
現在の店構えになったのは8年前です。それまでは今の店のすぐ近くで七坪ぐらいの小さな店を経営していたのですが、手狭になりこちらに移りました。

―自転車は昔から好きだったんですか?

勝浩さん:子どもの頃からよくいじっていましたね。オートバイも好きで、モトクロスもやっていましたよ。

―現在は、勝浩さん、息子の隼弥さん、奥さまのさゆりさんの三人で経営されていますが、役割分担を教えてください。

勝浩さん:息子はスポーツ車を得意としています。主にメカニック系ですね。妻は販売、経理、パーツなどの仕入れです。僕は業務全般をおこなっています。

―隼弥さんは、元々、後を継ぎたいと考えていたのでしょうか?

隼弥さん:自転車に乗るのは好きでしたし、小さい頃からお店を経営している父を見ていたので店を残したい気持ちはずっとありました。

―隼弥さんは自転車の専門学校を卒業してすぐに「じてんしゃ屋はすぬま」で働きはじめたそうですが、他の自転車屋での修行などは考えなかったのでしょうか?

隼弥さん:僕が学校を卒業した時、ちょうどウチの店で長年働いてくれていたスタッフの方に独立の話が出たタイミングだったんですよ。教えてもらえるのは今しかないと、すぐに店舗に入ってその方の下で働くことを決めました。
家族だと言わないようなこともズバズバと言ってくださって、たくさん怒られましたけど、すごく勉強になりましたね。良い経験です。

自転車利用者のタイムロスをなくすため代車を用意

―客層を教えてください。

勝浩さん:小学生のお子さんから高齢者の方まで、ものすごく幅広いです。子どもを前後に乗せられるような、電動自転車を利用されている奥さまがたも多いですね。UberEatsの配達員の方や訪問介護の方など、仕事で自転車を使っている方もいらっしゃいます。その他は、夕方から夜にかけては趣味でロードバイクやマウンテンバイクに乗っている方が多いですね。90%が近所に住んでいる方です。

― 一日どれぐらいお客さまが来られるのでしょうか?

勝浩さん:レジだけで見ると一日平均4~50件動いているんですよ。空気入れや新規購入の相談など無料のサービスを入れると、100人ぐらいではないでしょうか。本当に毎日忙しいですね。休日になるとお昼を食べる時間もとれないほどです。この状態がずっと続けばありがたいですね。

ただ、この先の不安はあります。一番心配なのは、値上がりですね。自転車本体だけでなく、タイヤ、バスケットなど、軒並み値上がりしていますからね。修理代を今のまま保つのは大変ですが、自転車は生活に直結している乗り物ですから、なるべくお客さんの負担にならないよう、ギリギリまで我慢しようとは思っています。

―どのような利用内容の方が多いのでしょうか?

勝浩さん:メンテナンスの方、新車購入の方、五分五分ですね。
常連さんは仕事で利用されている方も多いので、仕事に影響が出ないよう修理の際は、代車をお貸ししています。
その場でぱぱっと故障箇所を修理することも可能ですが、時間をかけて細かいところも見た方がいいと思うんですよね。パンクだけ直すよりも、タイヤ自体を変えた方が良い時もあります。代車があればお客さんも安心して自転車を預けられます。
その方が安全ですし、不具合が出る度に修理に持って来るタイムロスもなくなります。

―代車の利用者は多いですか?

勝浩さん:希望者には無料でお貸ししているので、8割ほどは利用されますね。
普通の自転車を使っている方に電動自転車を貸すと、電動自転車もいいなと思っていただけて販売に繋がることもあります。試乗感覚でも乗っていただいています。

じてんしゃ屋はすぬまの卒業生が、いろんなところでお店を開いてくれたらうれしい

―仕事のやりがいはどういう時に感じますか?

隼弥さん:修理をして喜んでもらえた時がうれしいですね。あとは、他のお店のスタッフとの交流もやりがいに繋がっています。若いスタッフ同士でよく情報交換をするんですよ。

勝浩さん:どんな時も“あて”にされていることがやりがいですかね。25年同じ定休日なのに、「今日休みなの?」って未だに残念がられるんですよ(笑)
いつも頼りにしてくださるのはすごくうれしいですよね。

看板犬のトイプードル ペプシくん

―最後に今後の「じてんしゃ屋はすぬま」の目標を教えてください。

勝浩さん:いつかは息子の下に若い子が入って来るでしょうけど、そういう若い子がきちんと働ける環境を作りたいですね。ウチの店で学んで独立・開業してくれたらうれしいです。
「じてんしゃ屋はすぬま」の卒業生が、いろんなところでお店を開けるようになってほしいですね。人材面も難しいし、資金の面も難しいと思いますが、若い子を育成できるようなお店を作るのが夢です。

隼弥さん:僕はまだまだ修行中ですし、店を広げるというよりも、今できることを精一杯やっていきたいですね。あとは、お客さんなどを含めて、一緒に自転車に乗りに行くイベントをやりたいんですよ。

勝浩さん:僕が店をはじめた頃は、観光バスをチャーターしてマウンテンバイクを積んで、お客さんと一緒に出かけるイベントを年に2、3回開催していたんですよね。お店の終わった後、夜に桜を見ながら駒沢公園までサイクリングに行くこともありました。
息子はロードバイクに乗っているので、ロードの人と一緒に行けるようなイベントができればいいんじゃないかと思います。

おわりに

取材時期がちょうどハロウィンと重なり、お店がかわいらしく飾り付けられていたのが印象的でした。

看板犬のトイプードルペプシくんがお出迎えしてくれたり、スタッフのみなさんが温かい笑顔で声をかけてくれてくれたりと、アットホームな店内はとても入りやすい雰囲気。常連さんが多いのも納得です。

「これから自転車に乗りたい方も、修理をしたい方も、自転車のことならなんでも相談にのります」と勝浩さん。自転車で困りごとがある方は、ぜひ気軽に訪ねてみてください。きっと力になってくれるに違いありません。

【Information】
店名:じてんしゃ屋はすぬま
住所:東京都大田区中央6-30-4
電話:03-5700-5233