Z ZONE

2024.12.26

時代に合わせて柔軟に変化していく“町の自転車屋さん”|レジャーハウス ミヤザキ

Z ZONEがおくる、“町の自転車屋さん”のインタビューシリーズ。

第十七弾は、八王子駅北口より徒歩10分程の商店街に位置する「レジャーハウス ミヤザキ」さん。

創業100年を超える歴史あるお店には、豊富な種類の自転車と店主の温かい人柄を求めて、多くのお客様が訪れます。
また、HPやSNSを活用した情報発信にも力を入れ、時代に合わせた新しい取り組みを行っているのも特徴の一つといえます。

今回は、社長の宮崎充啓さん、販売スタッフの西村征也さんから、お店のこだわりや特徴についてお話をお伺いしました。長年、地域の人々に愛され続ける、お店の秘密に迫ります。

自転車をレジャーとして楽しんでもらいたい

左から社長の宮崎充啓さん、メカニックの中里元さん、販売スタッフの西村征也さん

―本日はよろしくお願いします。まず、お店の歴史を教えてください。

宮崎さん:大正3年に祖父が創業しました。私は現在、三代目です。

はじめは「宮崎商会」という名ではじめたのですが、「株式会社ミヤザキ」を経て、昭和57年に現在の「レジャーハウスミヤザキ」に社名を変更しました。

自転車をもっと遊び(レジャー)の道具のひとつとして楽しんでもらいたいという理由から名付けました。

 

―スタッフについて教えてください。

西村さん:現在、スタッフは4人です。社長、メカニック、アルバイトスタッフ、私の4人体制でまわしています。

宮崎さん:通常の仕入れや販売などの方針は、彼(西村さん)に任せています。私は日常業務をしつつ、彼を補佐する感じですね。

 

――西村さんが、入られたのはいつでしょう?

西村さん:10年ぐらい前ですかね。それまで自転車業界には、まったく関わってこなかったんですよ。ちょうど私の両親がフランス旅行にいくタイミングで、フルタイムで店で働いていた母から「本業の差し障りのない範囲で、旅行期間だけ店を手伝ってくれないか」と頼まれたのがそもそものきっかけです。

口コミでのご来店多数の地域で人気のお店

―お店の特徴やこだわりについて教えてください。

西村さん:一般の自転車から子供用の自転車、スポーツバイクまで、幅広く取りそろえています。最近は、あるカテゴリーに特化した専門店が多いですが、当店は多くの種類の自転車を取り扱うことで門戸を広げて「どんな自転車がいいかな」とお客様にいろいろと選んでいただけるようにしています。

 

―店舗にもたくさん自転車がありますが、常時、どれくらい置いてあるのでしょう?

西村さん:おおよそ80台ぐらいは常時展示していると思います。

数多くの自転車が取りそろえられている

 

―自転車だけでなくアウトドア用品やアパレル用品なども置いてありますね。

西村さん:最近は、自転車を軸にしながらも、いろいろなものと組み合わせていくことを試験的に行なっています。今だと、キャンプ用品や洋服を自転車と組み合わせて販売していますね。

自転車だけでなくアウトドア用品なども置いてあるお店

―お店に来られるお客様はどのような方が多いですか?

西村さん:3、4歳の小さなお子さんから、80代の方までいらっしゃいます。ただ、以前データをとったことがあって、それを見ると40~50代の方が多かったですね。

宮崎さん:自転車を楽しもう、スポーツ車を楽しもうっていう人は、うちでは30~50代が多いのではないですかね。コロナ禍以降、八王子の住環境が注目されたのか、八王子に引っ越してくる方が増えてきているように思っていて、新規のお客様も増えましたね。あとは、HPやSNSで情報を見た遠方のお客様も来てくださっています。

西村さん:遠方からのお客様も増えたのですが、多くは口コミで来られますね。お父さんやお母さんが、お子さんを連れていらっしゃるとか、ご近所さんに紹介してもらって来られる方がほとんどだと思います。

―HPやSNSで発信する時のこだわりなどありますか?

西村さん:一般車や電動自転車は、広告や宣伝をうたなくてもお客様にご来店いただいているので、あえてHPやSNSで訴求はしていないです。一方で一般の自転車屋さんのイメージが先行する部分もあるので、スポーツ車も取り扱っていますというところをSNSでは打ち出しています。その中でも特にこれからスポーツ車に乗りたいという初心者の方向けの情報を中心に発信しています。

 

―YouTubeでも動画を多く投稿しておられますが、はじめたきっかけはありますか?

西村さん:YouTubeって、子ども向けや若い人向けの動画が多くて、大人が見られる動画が少なかったんです。でも、回線速度が速くなってキレイな映像で見られるようになってからは、専門性の高い動画が一気に増えましたよね。それに伴って見る人の年齢層も上がったのですね。
私が入社した頃からHPやInstagram、Facebook、X(旧Twitter)などを積極的に取り入れて運営してきましたが、いまいち内容が読者やお客様に届いているのかなという部分や、実際の来店動機につながっているのかよくわからない部分もありました。ただこれを写真から動画にしてみたら、もっとわかりやすく伝えられるかもしれないと思って、2019年からYouTubeチャンネルを開設しました。

―自分で撮って、自分で編集もされてるんですか?

西村さん:そうですね。でも、そこまで大変じゃないですよ。企画を立てて原稿を作ってという風にはしてなくて、思いつきでテーマだけ決めたら即興でカメラの前で喋って動画を作っています。編集もシンプルにしていますが、画質や音声にはこだわりを持って、視聴者の方に見やすい動画作りを心がけています。

社会の接点となる場所として

―地域の行事に参加されることはありますか?

西村さん:主に社長が参加しており、交通安全週間の時に街頭で自転車の点検を行うなど、地域の交通安全活動に従事しています。昨年までは自転車組合の方々と協力して、市内の小学校に出向いて交通安全教室の一環で、子どもたちの自転車の整備点検活動に参画していました。

一方、ここ数年八王子市は、商工会議所を中心に、市内の企業と協力しながら、アウトドア関連の事業やアウトドアがしやすい環境整備に力を入れています。その一環として、毎年3月に市内の公園で、アウトドアイベントが開催されていますが、私たちも例年参加しています。イベントではアウトドアの一環として自転車を使っていただけるように、コーヒーライドの提案をしたり、店で扱っているアウトドア用品の紹介をしたりしています。

広々とした店内

―仕事のやりがいは、どのような時に感じられますかね?

西村さん:YouTubeの動画を見てご来店いただいて、自転車買っていただける。店のファンになっていただける。そういう方がいらっしゃると、自分の発信したことがご覧いただいている方の誰かには届いている気がして、それは単純に嬉しいですね。

あとは、海外からお問い合わせがあった時もうれしいですね。さすがに関税の問題や輸送の問題があって、売ることはできないですけど、海外からも見てくれているのはありがたいですね。

―お客様とのエピソードで何か印象に残っていることはありますか?

西村さん:私たちの店特有かもしれないですけど、買い物目的ではない方もふらりと立ち寄られることが多いです。「こんにちは!」と来られて、商品を見て話をして帰って行かれます。話す内容も自転車に関係することというより、日常会話のような何気ない会話が多いですね。

またよくお客様から差し入れをいただくので、コーヒーを淹れてお客様と一緒にコーヒーを飲みながら会話をして、しばらく滞在されるみたいなことも多いです。そういったことができるのは個人店のいいところですよね。

時代と共に自転車屋さんも変わらないといけない

―これからの目標はありますか?

西村さん:今、自転車に乗られる方が徐々に減ってきているように思います。新車販売台数の減少がそれを物語っています。

消費者の消費行動も大きな変化が起きています。特にeコマースが自転車業界にも広がってきていることは注目に値すると思います。というのも、メーカー自体がネット上で直販をはじめ、メーカーからそのまま自宅に配送される時代になっています。ただ、その一方で「自転車は自転車屋さんで買った方がいい」という方も一定数いらっしゃる。そういう方がいてくださる限り自転車屋の存在価値はあると思っています。その人たちのためにも続けていくことは大事だと思うのですが、どのように事業を維持していくのかついては課題があるように思います。

 

私たちとしては、自転車を軸として、ちょっと違った方向性を考えていかなければいけないですし、そこがリアルな個人店舗の生き残っていける可能性なのかなと思います。時代の流れを見ながら、時代に即した売り方に変えていくことが必要ですが、その一方で町の自転車屋さんとしての良き部分も同時に残しながら運営していくことが目下の目標ですね。

―最後に、これから来られるお客様に向けてメッセージをお願いします。

西村さん:皆さんが自転車を買おうって思った時に、ネットで調べたり、YouTubeを見たりしてからリアル店舗にいざ行ってみようかなと思いますが、とりあえず大手自転車チェーン店やホームセンターに行ってみようってなると思います。私の周りの方に聞くと同じような回答が返ってきます。仮に近くに個人の自転車屋があったとしてもです。

詳しく聞いてみると、みなさんが思っている個人店に対して「何か質問すると怒られるんじゃないか」とか「店に入ったら買わないといけないんじゃないか」みたいなイメージを持っていることがわかってきました。

大手自転車チェーンとは違った観点から、お客様のニーズに合った自転車をご提案し、その後のメンテナンスもしっかりと行っていますので、気軽にお越しいただければ嬉しいです。

おわりに

インタビュー中に、西村さんがおっしゃられていた言葉が印象的でした。

「お客様が求めていただいていることに対して、その人に一番良い自転車を提供し、お客様が快適に生活できれば、それがベストかなと思っています。自分たちが売りたいものではなく、お客様のニーズに応えられるような商品を提供したいです」

ただ売りたい商品を勧めるのではなく、お客様一人ひとりのニーズに寄り添い、その人にとって最適な一台を提案する。その姿勢こそが、多くの方に支持される理由なのだと感じました。

街の自転車屋さんが、温かいサービスを提供し続けていることは、多くのお客様にとって非常に価値のあることです。ぜひ、皆さんも一度足を運び、その温かさと丁寧な対応を体験してみてください。

 

【Information】
店名:レジャーハウス ミヤザキ
住所:東京都八王子市横山町19-2
電話:042-642-5253