Z ZONE

2024.01.29

なんでも平均点以上でこなせるお店を目指して“町の自転車屋さん”|藤平自転車商会

Z ZONEがおくる、“町の自転車屋さん”のインタビューシリーズ。

第十四弾は、大森南の閑静な住宅街に位置する「藤平自転車商会」さん。

創業86年を迎える藤平自転車商会は、それぞれ得意分野が違う3人のスタッフさんが抜群の知識で対応してくれる、地域の人々から信頼されるお店です。

今回は、店主の長谷川達也さんに、創業からこれまでの歴史や、お店の特徴などをお伺いしました。長年、愛されるお店の裏側にぜひ触れてみてください。

 

創業86年を迎えた地域密着型のお店

店主の長谷川達也さん

 

―本日はよろしくお願いします。まずは、お店の歴史を教えてください。

長谷川さん:初代・藤平彦治が1938年に創業した、今年で86周年を迎えるお店です。
初代の彦治は満州に徴兵され、その後、シベリアに抑留されたんです。その時は、彦治の妻のとりが、お店を守っていたと聞いています。彦治がシベリア抑留から戻ってからは、夫婦で経営していたようですね。

二代目は、私の父の藤平正になります。父は、養子として藤平家に入って藤平自転車商会を継ぎました。

父が藤平家にやってきたのはオイルショックの後です。父は元々、工場を経営していたんですが、オイルショックの影響で景気が悪くなり工場をたたむことになったんです。その時に、私の母の姉が彦治と縁があったことで、父は藤平自転車商会で働くことになりました。
父が働きはじめてから、子どものいなかった藤平家で跡継ぎを探しているという話になり、養子になったと聞いています。

はじめは自転車のみを取り扱っていたんですが、1970年代後半、ヤマハさんのパッソルが発売された時に代理店を探しており、お声かけいただいたことをきっかけに、自転車とバイクの両方を取り扱うようになりました。

バイクも取り扱っています!

三代目が私です。25年前から、父と共に働きはじめました。父が引退し、今は後を継いでいます。

 

それぞれ得意分野が違うスタッフたち

ースタッフについて教えてください。

長谷川さん:一人目は、林信夫さんです。林さんは、私の父とほぼ同時期に藤平自転車商会にやってきました。それから50年近く働いています。
林さんは自転車もバイクもどちらも得意なベテランスタッフです。私も林さんに自転車のことをたくさん教わりました。師匠的存在です。

ベテランスタッフの林信夫さん

二人目は、山田弘嗣さんです。山田さんは、私の姉の旦那さんです。山田さんはバイクに30年以上携わっていて、バイクのプロです。もちろん自転車の整備もできます。
私の父が高齢になり引退を考えるようになったこともあり、2020年に入ってもらいました。

バイクのプロ山田弘嗣さん

山田さんは絵やデザインが得意で、藤平自転車商会のTシャツや、トートボックス用カバーなど藤平自転車商会のオリジナルグッズを作ってくれています。ネット関係も得意で、店のHPやInstagramなども、山田さんの担当です。

山田さんがデザインしたTシャツ

最近、父が引退したので、現在は、林さん、山田さん、私の三人で店をまわしています。私は、主に自転車を専門にしています。

 

正月のくじ引きは大人気イベント

ー藤平自転車商会の特徴を教えてください。

長谷川さん:何かに特化するよりも、なんでも平均点以上にできるお店にしたいと思っています。例えば、ウチは電動アシスト自転車もヤマハさん、パナソニックさん、ブリヂストンさんの三大メーカーとも直接取引しているので、町にある他の自転車屋さんの中でも購入や修理もしやすいですし、スポーツ車にも力を入れていて、他のお店よりもタイヤを揃えるようになどの工夫をしています。
どの分野でも平均点以上を目指して努力しています。おかげで口コミを聞いて来店されるお客さまも増えました。

店内の様子

ーお客さまはどのような方が多いのでしょうか?

長谷川さん:やはり、ご近所の方が多いですね。特に幼稚園や保育園に通っているママさんたちはよく来られます。子乗せ電動アシスト自転車を利用のお客さまは、他店より多いんじゃないでしょうか。
あとは、山田さんがInstagramを頑張ってくれているおかげで、ちょっと離れたところからでも「Instagramを見て、この店が一番良さそうだったので来ました」と言ってくださるお客さまもいます。

ーお客さまのために行っているイベントなどはありますか?

長谷川さん:正月に、トイカプセルを使った限定300個のくじ引きを行っています。景品は、オリジナルTシャツやボールペン、サドルカバーなどですね。一等はもちろん自転車です。お店を知ってもらうためにやっているイベントなので、無料で行っていることもあり、用意した分はすぐになくなっちゃいますね。

トイカプセルのくじ引き

ー大人気イベントですね!

長谷川さん:山田さんがアイディアを出してくれたんです。Tシャツなどのオリジナルアイテムなども山田さんのアイディアですし、山田さんのおかげでいろいろ新しいことをはじめられました。

 

地域の自転車屋さんとも情報交換を

ー大森地区は、地域の繋がりが強いとお聞きしました。

長谷川さん:大森地区は、昔から仲が良いんですよね。例えば、ウチは電動アシスト自転車に強いから修理の方法を他店に教えたり、逆にスポーツ車を頑張っている店から教えてもらったり。各店、得意分野があるので、お互い知らないことについて情報交換していますね。
特に山田さんはアクティブだから、地域の自転車屋さんによく顔を出して、コミュニケーションをとっています。

ー技術的な情報交換を多くされているのでしょうか?

長谷川さん:技術面は、多いですね。その他だと、取り扱ってない自転車やメーカーなどについても、すでに取り扱っていて詳しいお店から教えてもらうことがあります。

ー地域の関わりは他にもありますか?

長谷川さん:大田区には、子どもたちが信号や標識、踏切などが設置されたコースを走り、交通ルールを学べる『交通公園』というものがあります。その交通公園に置いてある、自転車の修理や点検を行っています。ウチは子どもたちも多く利用しているので、交通公園の自転車を修理することで、地域の子どもたちに還元できればと思っています。

 

創業86年の重みを感じて

ー仕事のやりがいはどのような時に感じますか?

長谷川さん:86年も続いていることに対しては、大きな意味を感じています。世代を超えて代々、ウチで自転車を買ってくださっている方から「ウチはずっと藤平を利用しているよ」と言われるとすごくうれしいですし、もっと頑張ろうと思いますね。
引っ越しなどで地域にやってきた新規のお客さまも、子どもができて、そのお子さんがまたウチで購入してくれて常連さんになって。そういう姿を見ると、少しでも長く続けたいなと思います。

ー最後に、藤平自転車商会の今後の目標はありますか?

長谷川さん:86年も続いた店ですから、100年を目指したいですね。できれば、令和の次の元号までは続けたいです。でも、続けるというのは、お客さまあってのことですからね。少しでもお客さまに良い思いをしてもらえるように、頑張ろうといつも考えています。

 

終わりに

少しでもお客さまに還元することを考えていますという、長谷川さん。
藤平自転車商会さんでは、他店で購入した自転車にスタッフが空気を入れる際には100円をいただいています。しかし、100円とはいえ、それ以上の還元がしたいと、自転車での困りごとの相談に乗ったり、自転車の調子をみたりすることもあるそう。
取材を通して”少しでもお客さまのために”を、実現してるからこその86年の歴史だと感じました。

「修理のことや、メンテナンスのことなど、なんでも相談に乗りますので、気になることがありましたら、ぜひ、お店にいらしてください」と長谷川さんは言います。ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょう。

【Infomation】
店名:藤平自転車商会
住所:東京都大田区大森南2-2-3
電話:03-3741-7631